Eng4Eng~エンジニアのための生きた英語Tips

在米10年目の著者が、実際に遭遇したITエンジニアのためのお役立ち英語Tipsを綴っていきます。

上司から「vanilla」ソフトウェアをインストールしろと言われたら、どうする?

第3回目のフレーズは「vanilla」。

 

上司:「ちょっと、新入りのキミ」

あなた:「はい!」

上司:「このソフト買っといてくれる?」

上司:「で、とりあえずバニラでいいから・・・」

あなた:(ソフトクリームのバニラ味が何だって?)

上司:「ソッコーでインストールしといて」

あなた:(即興でインストゥルメンタル!?)

あなた:「ちょっと何言ってるかわかりません!」

上司:「・・・。」

 

こんな聞き間違い、新人エンジニアだったらしてしまうかも?

あなたの上司が求めていたのは、ソフトクリームではありません 笑

 

IT業界におけるvanillaとは、なにも設定変更や機能追加などをしていない、まっさらなデフォルト版のソフトウェアやアルゴリズムのこと。アメリカでのアイスクリームのデフォルト味/標準味がバニラ味なことから来ています。

 

有名な使用例はというと、Linuxでは vanillaカーネルという言葉があり、Linux作者のリーナス・トーバルズさんがリリースするのはプレーンな vanilla版となります。それをベースに、いろんな人が追加トッピングをごてごてと施していくわけですね。

 

注意点として、厳密にはvanillaはデフォルト版ではなく、ありふれた設定のことを指すとの指摘もあります(source)。なので、論文や技術書で使う時は気をつけてください。例えば「the baseline scoring sytem is vanilla Moses」(source)という文章があった時、これ単独ではMosesがデフォルト設定なのか、ベースラインとして業界標準的に使われるデファクト設定なのか、曖昧性が生じてきます。(デフォルト版と理解されることのほうが多い気はします。)

 

vanilla は、英辞郎には「〈話〉普通の、ありきたりな、面白みのない」とあり、IT業界以外でも使われることがあるようです。ちょっと混乱するのが食べ物に使われた時。「vanilla wonton soup」と言ったら、バニラ味のワンタンスープではなく、ありふれた(辛くない、酸っぱくない)ワンタン味です。(source)

  

発音は「vah-NIHL-uh」で、日本語読みのバニラだとたぶん通じないでしょう。ポイントは「v」サウンドとアクセント。forvo.comでアメリカ人5人の「バニラ」発音の聴き比べができますので、ご参考に。

 

ではまた次回!

データサイエンティストなら知っておきたい、ビッグデータの「slice and dice」

第2回目のフレーズは「slice and dice」。

複雑なデータを扱うというような文脈で使います。

 

え・・・?上司から「キミ、このビッグデータslice and diceしておいて」と頼まれて、「スライス(薄切り)にダイス(角切り)ですね、お安いご用!」と、プリントアウトしたデータを片っ端からシュレッダーにかけてしまった・・・?

 

それはデータサイエンティストとしては致命的なミス。あなたの上司が求めていたのは、紙吹雪ではありません 笑

 

Wiktionaryによれば、slice and diceの意味は、「To rearrange or analyze in a number of different ways, often arbitrarily」(source)。大規模で複雑なデータがあったときに、いろいろな切り口(属性)によるフィルタリングなどを試すことで、分析・理解する、というようなニュアンスのフレーズです。目的語としては「データ」などがよく来ます。

 

実際の使用例を最近のニュース記事から探してみると、こんな感じ。

 

... to enable analysts to slice and dice large datasets by any combination of dimensions and measures.

(source)

 

... and lets account holders slice and dice the analytics data using various criteria, such as visitors' industry, geographical regions, professions and employers.

(source)

 

The city’s system will also spit out a handy spreadsheet file for use in Microsoft Excel or similar software, so anyone can slice and dice the data, analyze and share.

(source)

 

There are a wide range of arcane hedge-fund strategies, each one looking to slice and dice the financial markets in a different way.

(source)

 

 "We're looking at ways to re-slice and dice it to address [Tunney's] immediate concerns about the Cantilever approach to ...

(source)

 

※強調はすべて筆者による。

 

特定の手法に対する固有名詞、というような感じの説明をしている日本のサイトもありましたが、私はそういう用法は遭遇したことがないです。そういう名前の手法もあるのかもしれませんが、上の例からもわかるように、抽象的な使われ方のほうが多いと思います。

 

余談ですが、特定の手法名なのに曖昧な用語に誤用されてしまった例としては LSI (Latent Semantic Indexingが挙げられます。数年前の話ですが、LSI/LSAを使ってないにも関わらず、SEO業者が「LSI-based services」「LSI-based website optimization」などとわけのわからないバズワードをでっち上げていた時期がありました。IR研究者のEdel García氏がブログでこのテーマを何度か面白おかしく取り上げてるので、興味のある方はどうぞ。

関連記事:Latest SEO Incoherences (LSI) | IR Thoughts

 

 

slice and diceは、英辞郎など日本のオンライン辞書では現時点でまだ見受けられないフレーズですが、筆者もたまに聞くフレーズです。覚えておいて損はないでしょう。

 

ではまた次回!

ミーティングや質疑応答で使えるフレーズ「let's take it offline/その件はまた後ほど個別に・・・」

第一回は「let's take it offline」。

 

エンジニアに限らないビジネス用語ですが、よく使われるので取り上げてみます。電話会議でこの言葉を聞いて「テイク・オフ・ライン?」と電話回線を引っこ抜くのは間違いです(笑)

 

ミーティングやプレゼンなどの最中で、いま回答すべきではない、参加者みんなの役には立たないような質問をされることってあると思います。そういうシチュエーションで活躍するフレーズがこの「take it offline」。

 

  • 質問者・・・「今の発言に関連して、私は今プロジェクトでこうこうこういう問題を抱えているんだけど、それについてどう思います?」
  •  回答者・・・(ん?あんまり関連してないし、結構細かい質問だな。ちょっと回答長くなりそうだし、この質問にみんなの時間を割くのは勿体ないな…。)
  •  回答者・・・「let's take it offline」(その件は後で個別に…)

 

こんな感じです。 やんわり断る感を出すには、手短な答えや理由も挟むといいかもしれません。

 

せっかちで短気なアメリカ文化では、ミーティングで無駄な話(スモールトークの類は除く)を長々とされると、イライラされることも。今回のようなフレーズを使って質疑の主導権を巧みに握るのもプレゼンスキル・コミュニケーションスキルの一つと言っていいと思います

 

ちなみにわりと新しい言葉のようで、2000年頃から使われだしたという意見も。

I believe I started hearing it (or more often "let's take this offline") around 2000

(引用元)

 

英辞郎など日本のオンライン辞書では現時点でまだ見受けられないフレーズですが、筆者は良く聞くフレーズです。覚えておいて損はないと思います。

 

ではまた次回!

はじめまして

米国在住(2004年~)の著者が、ミーティングやメールなどで実際に遭遇したお役立ち英語表現を、メモがてら不定期で解説していきます。

 

対象:仕事で英語を使っている/使う予定のITエンジニア、研究者など。一部の記事はその他の方にも役に立つかもしれません。

 

優先順位が高いテーマ

  • ミーティングやプレゼン、メールなどでよく使うようなフレーズ
  • なるべく既存の辞書に載っていない、比較的新しい表現
  • その他海外で働く上で知っておくと便利な英語Tips

 

優先順位が低いテーマ

  • TOEICでも出てくるような基本的な単語(e.g. specification, ASAP
  • 専門用語(e.g. eigenvector, PCA)
  • 論文や技術書で使える言い回し(すでに良い書籍などが多数あるので)
  • GREでしか出てこないような難解用語(あまり役に立たないので)

 

例外も出てくると思いますが、こんな方針で書いていこうかと思います。